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連載 今月の話題
液体パーフルオロカーボンと眼科手術
Liquid perfluorocarbon for ophthalmic surgery
池田 恒彦
1
1大阪大学眼科
pp.915-921
発行日 1993年5月15日
Published Date 1993/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410908611
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はじめに
空気灌流下硝子体手術1)により術中に剥離網膜を復位させることが可能となり,眼内光凝固装置の普及と相まって,近年の硝子体手術の手術成績は飛躍的に向上している。しかし,空気は眼内液よりも軽いため,この方法では網膜の復位は周辺部からはじまり,順次後極部に向かっていく。したがって,周辺部裂孔のみを有する症例では,網膜下液を吸引するために後極部に意図的裂孔を作成する必要がある。また巨大裂孔網膜剥離では仰臥位での眼内液空気同時置換術で翻転した網膜を十分に伸展させることは困難である。
1987年,Changは巨大裂孔網膜剥離と増殖性硝子体網膜症(以下PVR)に対する硝子体手術時に液体パーフルオロカーボン(liquid perfluorocar—bon,以下 LPFC)の一種である perfluorotri—butylamineとperfluorodecalinを使用し,硝子体手術の補助手段としての有用性を報告した2)。LPFCの比重は水よりも大きいため,硝子体切除後の眼内に注入すると剥離網膜は後極部から周辺部に向かって復位していく。また水晶体や眼内レンズの比重よりも大きいので,LPFCを硝子体腔内に注入することにより硝子体腔内に脱臼した水晶体や眼内レンズを浮上させることもできる。これらの性質を利用して LPFC は種々の網膜剥離3〜10)や脱臼眼内レンズ11〜14),脱臼水晶体15〜18)の治療などに応用され,本邦でも新しい手術材料として注目されてきている。本稿ではLPFCの特性と現時点での手術適応およびその問題点につき触れてみたい。
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