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はじめに
子宮頸部の異形成(dysplasia)は炎症性とも腫瘍性とも,また良性とも悪性とも判断しかねる扁平上皮の異型病変を呼び,境界病変として位置づけられている.異形成は病理組織学的に上皮の各層において細胞成熟過程の乱れと核の異常を示す病変である.すなわち,極性の消失,多形性,核クロマチンの粗大顆粒状化,核形不整,異常分裂を含む核分裂像が見られるのを特徴とする.異形成はその程度により軽度(mild=slight),中等度(moderate),高度(severe)に分けられる.
子宮頸癌取扱い規約(1997年10月,改訂第2版)では異形成(dysplasia)-上皮内癌(carcinoma in situ)は子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia,CIN)として取り扱われており,軽度異形成(mild dysplasia;CIN1),中等度異形成(moderate dysplasia;CIN2),高度異形成(severe dysplasia;CIN3),上皮内癌(carcinoma in situ;CIN3)に分類されている.本規約ではHPV感染による細胞異型であるコイロサイトーシス(koilocytosis, koilocytotic atypia)は軽度異形成に含まれる.高度異形成と上皮内癌はCIN分類ではCIN3として包括されている.
婦人科細胞診の新しい記載法であるベセスダ方式(The Bethesda System)では従来用いられてきた上皮内病変の記載方式である異形成-上皮内癌(CIN)分類を扁平上皮内病変(squamous intraepithelial lesions)とし,軽度扁平上皮内病変(low grade squamous intraepithelial lesion,LSIL)と高度扁平上皮内病変(high grade squamous intraepithelial lesion,HSIL)の二つに分類されている.HPVに特徴的な細胞の変化,軽度異形成および両者の共存は軽度扁平上皮内病変(low grade squamous intraepithelial lesion,LSIL)とされる.中等度異形成,高度異形成-上皮内癌(CIN2 and 3)は高度扁平上皮内病変(high grade squamous intraepithelial lesion,HSIL)とされている.また,本規約ではHPV感染による細胞異型であるコイロサイトーシスが軽度異形成に含まれるため,軽度異形成の範囲が前規約より広くなった.
臨床的に,軽度および中等度異形成は経過観察とされ,その多くは消退していく.高度異形成は経過を追うと他の異形成よりも癌が発生する危険性が高いとされ,上皮内癌に準じた臨床的扱いを受ける.これらの病変は30歳台に多く,近年,さらに若年化の傾向にある.異形成-上皮内癌の好発部位は子宮腟・頸部の扁平・円柱上皮境界(squamo-columnar junction,SCJ)の円柱上皮側である.
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