Siesta
臨床教育の改善を願う
塚本 玲三
pp.31
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410904015
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30年前,私はよい臨床教育を受けるために渡米し,当時奴隷ともいわれたインターンを含め,レジデント,そしてフェロー,と一通りの臨床教育を終了した。その時点で助教授の地位を提供されたが,かつてより尊敬していた恩師である聖路加病院の日野原先生のお手伝いをして,日本の臨床教育の改善に尽力しようと決心して帰国した。以来,多くの研究医を指導し,日本の卒後臨床教育に微力ながら貢献できたと思っている。
しかし,日本の医学界の流れは相変わらず学会中心,研究志向で,学閥や医局閥は存続しており,30年間ほとんど変わっていない。したがって大学病院で卒後教育を受けた医師の大半が,全人的医療ができるだけの技術的能力も人格も備えていないといってもよかろう。私と同時期に渡米し,現在アメリカの医科大学の教授として臨床教育に重要な立場にある友人も,帰国するたびに日本の医学教育が余りにもおそまつだといって嘆いている。日米の医学生を比較してみると,スタートの時点では知能面においては日本の医学生の方がはるに優れていると私は思う。ところが,卒業の時点では,すさまじい臨床的実力差がついている。
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