扉
一教師の喜びと願い
角家 暁
1
1金沢医科大学脳神経外科
pp.5-6
発行日 1989年1月10日
Published Date 1989/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436202751
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この頃高校生活で大学受験のために厳しい勉強を強いられた反動だろうか,大学に入ってから遊ぶのが若者の一般的な風潮らしい.私どもの大学でもこの例外ではあり得ず,低学年,それも入学してきたばかりの1,2年生の学習意欲が低く,そこで脱落し,またこの時の不勉強がたたって基礎医学の知識が足らず,高学年でついていけなくなる学生が少なくない.学生にしてみれば受験一色に明け暮れた灰色の学生生活にようやく別れを告げ,これから6年間の医学部生活とあれば,最初の2-3年は精一杯青春生活を謳歌しようと思うのも無理はない.また先輩も遊んでも大丈夫などと,かっこうよく無責任なことをいうものだから始末が悪い.このような学生をどのように初年度から勉強させるかについては,どの大学でもいろいろと苦労されているようだが,私どものところでも一つの試みとして,新入生の一学期に特別講義の時間を設けて,医の倫理,臓器移植など社会で真剣に討議されている問題などを交えながら,大学生活の6年間に身につけなければならない知識の概略とその習得方法について話すことにした.私も"脳神経外科の世界"の題で,顕微鏡を使って傷つけてはいけない神経組織,血管を丁寧に避けながら良性腫瘍を摘出し,動脈瘤をクリップする手術をビデオで紹介し,このような手術ができるようになるには,もちろんその人に備わった素質も無視はできないが,最も大切なのは人体の解剖とその病態の正確な知識であると話した.
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