連載 眼の組織・病理アトラス・74
眼瞼の脂腺癌
坂本 泰二
1
,
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.1652-1653
発行日 1992年12月15日
Published Date 1992/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410901404
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脂腺癌Sebaceous adenocarcinomaは主に眼瞼に発生する悪性腫瘍である。多くは,マイボーム腺から発生し,まれにツアイス腺からも発生する。高齢者に好発し,上眼瞼にできることが多い。眼瞼皮下に無痛性の小腫瘤が形成され,臨床上霰粒腫として治療されていることが多い。腫瘍の浸潤の違いによって,慢性の結膜炎症状を示す場合や,嚢胞を形成する場合がある(図1)。発症の初期に発見することが困難な場合があり,初発から半年以上経過して受診することもまれではない。本腫瘍は,転移性が高いだけでなく,発見が遅れることが多いために生命の予後は悪い。
治療は腫瘍の全摘出である。病理学的検索のさいには,切除断端に腫瘍が残っていないことを確認する必要がある。また,断端に腫瘍細胞がなくても遠隔転移をすることがあるので,脈管内や神経内への浸潤についても調べなければならない。放射線療法は効果がない。
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