連載 眼科手術のテクニック—私はこうしている・36
後嚢のない症例に対する後房レンズ二次移植術—エンドスコープを用いた経毛様体溝強膜縫着術
江口 秀一郎
1
1東京大学眼科
pp.1905-1907
発行日 1991年12月15日
Published Date 1991/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410900968
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緒言
後房レンズ経毛様体溝強膜縫着術とは,後嚢欠損または後房レンズ固定に不十分な後嚢しか有しない人工的無水晶体眼において,後房レンズループの確実な固定を得るために,後房レンズループに結紮した縫合糸を毛様溝の位置にて眼外へ導き,強膜へ縫い付けることにより後房レンズ固定を得る術式である(図1)。
本手術は,1980年代に,前房レンズ,虹彩支持レンズ移植にて生じた水泡性角膜症に対する全層角膜移植手術に際し,角膜内皮に対する侵襲の少ない眼内レンズ移植を同時に行おうとする試みからはじまった1〜4)。その後,前房レンズ移植にて術後角膜内皮障害の進行や,緑内障発症などの術後合併症の報告が相次いだことと後房レンズ移植術の良好な術後成績が報告されるにともない5,6),後嚢を有しない人工的無水晶体眼に対しても後房レンズ縫着固定術が行われるようになってきた。縫着部位として,強角膜創,虹彩なども試みられてきたが1〜3),術後後房レンズの安定性と合併症発症頻度より,経毛様体溝強膜縫着術が主流となっている4,7,8)。従来,経毛様体溝強膜縫着術手術手技の最大の欠点は,毛様溝への通糸操作が盲目的に行われることであった。直視下にて通糸操作を行えないため,虹彩根部を通糸し,出血や瞳孔変形をきたしたり,通糸部位が思わぬ後方となって後房レンズ偏位や網膜剥離等の術後合併症を生ずる危険があった4,7,8)。
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