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酷暑の夏,皆様いかがお過ごしでしょうか。2022年前半の大きな出来事は,何といってもウクライナ問題です。ウクライナの現状は悲惨の一言です。網膜硝子体学会のニュースレターにも記しましたが,破壊されたビルの傍らで父親の名前を泣きながら叫ぶ金髪の少女の映像に,映画「禁じられた遊び」で,戦災孤児となったポーレットが「ミシェル,ミシェル」「ママ,ママ」と泣きながら駆け出した姿が重なります。人間は歴史から何も学んでいないと感じて,何ともやりきれない気持ちになりました。それだけではなく,ウクライナ戦争の影響で,世界中で進むインフレ,エネルギー価格高騰による光熱費の上昇など,経済の先行きも全く不透明です。新型コロナウイルス感染も完全には克服されないまま,次から次に新しい問題が起こっています。過去30年は,それなりに社会は安定していましたが,これからの社会はそうはいかないようです。
さて,今月の話題は「眼瞼内反手術」です。眼科の過去30年を考えてみると,好調な経済に裏付けられた白内障手術の大流行,硝子体手術の発展,レーザー技術の発展によるLASIKの拡がり,そして緑内障や網膜疾患への新しい薬物療法など,その時々に注目を集める「流行」がありました。日本では,現在眼形成手術が大きな注目を集めています。一方,現在連載中の近視の問題も世界的な眼科研究テーマとなっています。面白いことにその傾向は海外でも一緒であり,私が編集長を務めるSpringerの眼科専門誌には,眼形成術や近視に関する論文が次から次へと投稿されてきています。まさに現在の「流行」といってもよいほどです。これらの「流行」は,平和であればこそ人々の関心を集めるテーマとなりえます。ウクライナの眼科医によれば,現在は午前中診療をして,午後は軍での活動あるいは外傷の治療をしているということです。医療は社会状況に強く影響されますが,われわれの眼科の「流行」が平和な社会において注目を集める眼科医療であり,それがこれからも続くことを祈ります。
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