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あとがき
坂本 泰二
pp.266
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037055790790020266
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今年の3月をもって大学を退官いたしますので,これが本誌編集委員として最後の「あとがき」となります。眼科診療に携わって40年近くが経ち,これが一つの節目となりますが,完全に眼科診療から離れるわけではありません。それでも,この機会に過去を振り返り,感慨深い思いを抱いております。
今回の特集「小児の眼と全身疾患」を拝読し,40年前の研修医時代を思い出しました。当時は,小児の全身疾患について現在のような詳細な理解はなく,眼疾患と全身疾患は独立したものとして捉えられることが少なくありませんでした。全身疾患に伴う眼疾患の多くは治療が困難で,治療よりも盲学校や職業訓練への支援に力が注がれていた時代です。治療法のない疾患は研修医が担当することが多く,私自身も研修医時代にそのような患者さんを受け持ったことを覚えています。当時は遺伝子検査も十分に行われておらず,患者さんやそのご家族に対して無力感と申し訳なさを感じたこともありました。しかし現在では,疾患の理解が飛躍的に進み,治療が可能となった病気も増えています。これは大変素晴らしい進歩ですが,すべての眼科医がこの知識と進歩を理解し,共有しなければ,その恩恵は社会全体にいきわたりません。
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