特集 脈絡膜から考える網膜疾患
企画にあたって
園田 祥三
1
1鹿児島大学病院眼科
pp.1825
発行日 2016年12月15日
Published Date 2016/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410212094
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脈絡膜は,非常に血管や血流に富んだ組織で,網膜機能の維持に重要な役割を担っているが,その観察の難しさからこれまで研究が進んでいなかった。筆者は脈絡膜を,enigma(謎めいた・神秘的な)な組織だと表現している。現在,網膜光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)の撮影法やOCT器機の進歩によって生体における脈絡膜観察が可能となったことで,多くの研究者の目が脈絡膜に向かい始めている。
さらに,OCTの登場と近年の高性能化は眼科研究のアプローチを大きく変えた。OCTは,脈絡膜をはじめとする眼球の組織学的な特徴を非侵襲的に観察可能にしたことはいうまでもないが,OCTによって得られるイメージから眼球や疾患の状態が定量的・定性的に客観的な評価ができるようになったのは大きな意義をもつ。すなわちOCT画像のなかには,反射強度(明るさ),長さ(厚みや太さ),同一信号の連続性,平滑性など数多くの画像を構成する因子が存在し,それを数学的に評価することの意味を,OCT画像が眼科医に気づかせたと考えている。OCT画像に含まれる因子を数値化し評価することで,網膜疾患の病態を考える新たな視点が次々に提案されている。この作業を進めるに当たって,イメージングの手法は欠くことができないものである。おそらく眼科医は,今後放射線科医のようなイメージングに関する知識や処理方法を理解していく必要があると感じている。
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