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あとがき
坂本 泰二
pp.1294
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410211467
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2015年の梅雨の最中に,本稿を執筆しております。当地鹿児島は,さすがに南国だけあって雨の強さが違います。豪雨に慣れていない地方では,簡単に洪水になると思われるほどの激しさです。しかし,梅雨が明ければ,一転して厳しい夏が訪れます。極端から極端に振れるのは日本人気質の特徴とされていますが,このような気候も関係あるのかもしれません。
さて,今月の話題は,岸章治先生の「黄斑と硝子体の新しい理解」についてです。岸先生は,世界で初めて現在の形の黄斑ポケットを発見された研究者です。この概念は,網膜硝子体疾患の理解に大きく寄与し,90年代に大きく発展した硝子体手術の方法論に大きく影響を与えました。そして,2000年代になると,光干渉断層計の発達により,岸先生の正しさが次々と証明されました。今回の論文は,その総まとめともいえるものであり,特にSwept Souse光干渉断層計によって得られた最新の知見がわかりやすく解説されています。1990年以前の硝子体の知識は,主に剖検眼の観察によって得られたものであり,必ずしも病態と一致するものではありませんでしたが,岸先生の観察は臨床所見と見事に一致するものです。一般に,大成した研究には,適切な時期に適切な環境が整うことが求められますが,岸先生の硝子体研究は,研究者の興味,能力,環境の全てが完璧に揃った極めて稀有な例であり,今後も長く残るものです。そのことを理解してご一読いただくと,本論文がいっそう味わい深いものになると思います。
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