新刊紹介
—Zinn, K.M. and Marmor, M.F.(ed.)—The Retinal Pigment Epithelium
清水 弘一
1
1群馬大学
pp.844
発行日 1980年6月15日
Published Date 1980/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410208125
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- 文献概要
ここ十数年間,螢光眼底の普及もあって,網膜の疾患といえば即網膜の血管病という見方をよくするようになってきた。この傾向はそれ自身歓迎すべきことではあるが,考えてみると少々おかしい。感覚器である眼にとって視細胞以下の神経組織が最も肝要な構成要素であり,眼の他の組織は,血管を含めこれに対する附属装置というべきだからである。視細胞と距離的にも機能的にも最も密接な関係にあるのは網膜色素上皮(RPE=RetinalPigment Epithelium)であり,これの形態・機能・病理・臨床を集大成したのが本書である。極めて独特な主題を扱った野心作であるが,その狙いは見事に的中し,価値の高いモノグラフであり,教科書となっている。密度のごく高い本である。B5(週刊誌サイズ)よりもひと廻り大きい判に二段組みでぎっしりと本文が組まれているが,多数の図版が入り,26ある個々の章が独立した読みものとなっているので,どこから読みはじめても良い近付きやすい本である。33人の分担執筆であり,Henkind, Kuwabara, Tso, Youngなどわれわれにとっての知名人も参加している。
本書は二部に分かれる。はじめがRPEの形態と機能,後半がその病態生理と疾患とを扱かう。当然電顕を軸とした解剖が第一章だが,すぐRPEと視細胞との関係が次の章として続き,発生・比較解剖・生化学と記述が詳しい。
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