眼の臨床局所解剖
白内障手術に関連した局所解剖(その2)—結膜弁・角膜弁の形成
清水 昊幸
1
1自治医科大学
pp.716-717
発行日 1978年4月15日
Published Date 1978/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410207655
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はじめに:白内障手術の術後合併症はそのほとんどすべてが術創の癒合不全に由来する。浅前房,瘻孔形成はいうに及ばず,前房出血然り,緑内障然り,術後感染症もまた然りである。術創が1次的に水密性に閉じ,その後の治癒過程が円滑ならば,重篤な術後合併症は網膜剥離を唯一の例外としてほぼ完全に防止できる。
解剖(第1図):角膜輪部を中心として眼球各組織の関連をみる。球結膜①は輪部の最も角膜寄りの点で角膜上皮⑤に移行し,この点からボーマン膜が現れる。球結膜の下には前部テノン嚢(anterior tenon)②がこの移行部にまで達している。後部テノン嚢③は眼筋④を覆つているので筋付着部で強膜に付着し,当然のことだがこれより前に位置する強膜は覆つていない。筋付着部付近ではテノン嚢は前部テノンと後部テノンが重なり合い,二重になつている。角膜輪部⑥は角膜組織と強膜組織が人り交つているので半透明である。この部は結膜,前部テノン嚢を剥し露出すると青味がかつてみえるので,青色輪部(blue limbus)または外科的輪部(surgicallimbus)とも呼ばれる。この青色輪部の強膜端の真下にシュレム管⑦が位置している。これより強膜側によると強膜岬⑧があり,ここに毛様筋⑩が付着している。強膜とブドウ膜が直接結合しているのは視神経乳頭周辺とこの強膜岬の部だけで,あとは両者の間はポテンシャル・スペースとしての脈絡膜下腔⑨で隔てられている。
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