眼の臨床局所解剖
白内障手術に関連した局所解剖(その3)—水晶体の娩出
清水 昊幸
1
1自治医大学
pp.814-815
発行日 1978年5月15日
Published Date 1978/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410207669
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水晶体の摘出は,径24mmの眼球で径12mmの輪部を切開し平均値で径9mm厚さ4mmの水晶体を取出すのだから,眼球にとつては大きな侵襲である。白内障手術の術中合併症もこの段階に集中しておこる。いわく硝子体脱出(硝脱),いわく水晶体嚢破裂(破嚢)。この2大合併症以外にも水晶体の硝子体中への沈没,爆発性出血などまれではあるが破局につながる合併症や,前房内操作に伴う角膜内皮障害,虹彩の損傷等,程度の差こそあれ,毎常出現する合併症もある。
解剖(図1)水晶体④は角膜弁①を持上げると,前房②および虹彩⑧をへだてて瞳孔領にその前面を直接みせる。角膜弁を形成し前房が消失したとき,この虹彩と水晶体前面,すなわち虹彩・水晶体隔膜(iris-lens dia-phragm)がとる形は次の3形のいずれかである。第1は虹彩・水晶体隔膜が前房に対し凹面をなすもので,瞳孔が深く窪んでみえ,硝子体圧は低く,硝脱はおこりにくいが娩出操作はやややりにくい。第2は虹彩・水晶体隔膜が平面ないしわずかな凸面を成すもので,大部分の症例にみられ,硝子体圧は正常で,正しく娩出を行えば硝脱はおこらない。第3は虹彩・水晶体隔膜が強く凸面をなし,角膜弁が自然と持上り虹彩が術創に押し出してくるもので,硝子体圧が高く硝脱の危険が大きい。
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