Clinical Conference
診断および治療困難な黄斑部病変
土坂 寿行
1
1東京大学医学部眼科学教室
pp.1285-1288
発行日 1976年11月15日
Published Date 1976/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410205543
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土坂本日は診断がつけにくく,また診断がついても治療が困難な黄斑部の病変について紹介いたします。症例は23歳の女性。左眼視力低下と変視症を訴えて1974年8月16日,当科を受診しました。患者は当科受診前,5月初旬に急激な視力低下と変視症を訴えて近医を受診,以後,数ヵ所の病院を受診してトキソプラズマ血清反応を検査し,各病院で1:32から1;2,048までの抗体価が測定され,そのたびに診断がかわり,また治療もかわつていつたとのことです。
既往歴については15年間各種の小鳥を飼育していましたが,他に特記すべきことはありません。また家族歴は家族は4名,結核等の家族歴はありません。現症は初診時,視力はVd=0.1(1.0×−6.0D),Vs=0.01(0.1×—6.0D)で中等度の近視が認められます。視野検査では,周辺視野は正常ですが,約6度の中心比較暗点があります。右眼には異常所見はありません。左眼は前眼部,中間透光体正常です。左眼眼底は黄斑部に約1/2乳頭径の境界明瞭な円形灰白色の斑点があり,周囲の網膜よりもわずかにもりあがつてcysticな感じがいたします。これは網膜深層の瘢痕と思われます。その周囲には軽度の浮腫,病巣の乳頭側の網膜下には放射状の出血があり,黄斑部輪状反射は認められません。この出血と浮腫は長期にわたり,軽快増悪を繰り返して,病巣は20カ月の間に少しずつではありますが,拡大しております。
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