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緒言
近年における糖尿病治療の進歩により,患者の寿命が延長して一般人口のそれに近くなつていることは喜ばしいことであるが,一方罹病期間はそれだけ長くなつて,糖尿病性網膜症による失明者は増加しつつある。この対策として近来,光凝固術や脳下垂体別出術等も試みられているが,Scott VI度に達して網膜に広範囲の剥離を起こしてしまつた症例に対してはかかる手術によっても改善の望みはなく,失明は時間の問題とされている。著者らは前回8),このような症例に腹膜灌流を施行して強力に脱水をはかつたところ,網膜はほとんど完全に復位して,増殖性変化を呈しながらも視力0.7を得た例を報告した。これは,尿毒症性網膜症の末期に網膜全剥離を起こした症例に腹膜灌流を行なつているうち,全身状態の改善とともに網膜が完全に復位して以前の視力を取り戻した例にヒントを得て行なつたものである。
今回われわれは,開放性肺結核のため腹膜灌流も困難であつたので,利尿剤(Furosemide)大量投与とMannitol点滴静注を行なつて5カ月間絶対安静を続けたところ,網膜は復位を認め,8カ月後に視力0.2を得た例を経験したのでここに報告する。
A report is presented on a 56-year-old male who suffered from diabetic retinopathy with total retinal detachment in both eyes. The pa-tient recovered his vision from hand movement to 0.2 and the retina was restored to normal position after an energetic treatment with diu-retics and mannitol injections under absolute hed rest for 5 months.
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