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I.緒言
脳下垂体およびその付近の腫瘍が潜在する場合,妊娠中に視神経交叉部を圧迫して,半盲症,視野欠損,視力障害などをきたし,出産を契機として,これらの眼症状が忽然として消失することは良く知られている。著者らがここに報告する症例は,妊娠中に左眼の瞼下垂と左頬部のしびれ感をきたしていたが,分娩の翌日にはこれらの症状は全く消失したという既往歴を持ち,分娩後6年を経た今日もなお,引き続き無月経で乳汁分泌があるが,再び左眼瞼下垂と瞳孔不同症をきたしたため来院したものである。この既往歴から著者は脳下垂体腫瘍を疑い,頭蓋単純撮影を行ない,トルコ鞍の拡大および形態の変化を見出して脳下垂体腫瘍と診断を下したが,脳血管撮影を行なつてみると,左側頭葉下面に大きな腫瘍があることが判明し,開頭手術により左前側頭葉下面に大きなHaemoangioma Cavernosがあることが判明した。
なお,本例には6年前の出産以後,引き続き無月経と乳汁分泌が存続し,子宮が萎縮している。これはChiari-Frommel症候群といわれるものであり,剖検を行なつていないので下垂体腫瘍があつたか否か,また,下垂体が圧迫されていたため,明らかにすることはできなかつたが,はなはだ興味がある症例であるので報告する。
A female of 35 years of age had suffered from left-sided ptosis and ipsilateral hypesthesia of the face to last from the 6th months of hersecond pregnancy till shortly after delivery seven years before.
Ever since the delivery, amenorrhea and lactation lasted accompanied by atrophy of the uterus (Chiari-Frommel syndrome). Six years after this delivery, bilateral ptosis and left-sided mydriasis developed. The visual acuity, visual field and the fundus findings were normal. X-ray studies of the skull revealed slight enlargement of the sella turcica.
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