臨床実験
眼圧力脈波に関する研究(第1報)—高血圧者の眼圧力脈波について
瀨戸山 陽
1
1八幡製鉄所病院
pp.812-816
発行日 1955年5月15日
Published Date 1955/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202230
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眼球は胎生学的には,脳の一部と考えられており,脳疾患に際し,多くの眼症状を現わすことは我々が屡々経驗する所である。又網膜中心動脈の口径は210μ以下であり,脳出血を起す脳血管は多くは口径70〜200μと云われているから,高血圧症の場合,眼底血管の性状を知ることにより脳血管の状態を推察し得るわけである。岩男氏は上膊動脈脈波の機械的刺戟に対する反応を検査しているが,これから直ちに脳血管の状況を推察することは出来ない。何故ならば上膊動脈壁は脳血管壁と組織学的にも,又機能的変化に於いても異るからである。そこで眼圧力脈波の検査を行うことは,脳血管の状況を知る上に於て重要なことである。
(眼圧力脈波について)1928年Thiel氏は角膜搏動を記録し,角膜脈波を二種類に分けた。即ち,心搏動に一致して眼球内に流入する血液のため,わずかながら,眼球の容量変化が起りそれにより生ずる振動を描写した脈波を容量脈波と名づけ,眼球をプレチスモグラフと考えて,外圧を加え眼内圧を上昇させ,それによる血管圧迫により生ずる脈波を,狭義の圧力脈波と云つている。川嶋氏は容量脈波より,圧力脈波(狭義)に移行する部分で,脈波休止期,又は脈波高が低くなりわずかに振幅する不明瞭期を過ぎて特有の脈波が現われ,その高さが高くなつた時を以て,網膜中心動膜の最小血圧に一致した点としている。
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