特集 循環機能の正常値
脈波
稲垣 義明
1
1千葉大学第3内科
pp.705-707
発行日 1982年7月15日
Published Date 1982/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204035
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動脈脈波の記録は古くから行われているが,その臨床応用は近年しだいにたかまりつつある。動脈脈波としてもっとも広く用いられている頸動脈脈波の正常波形は図1に示すごとくであり,左室から大動脈への駆血とともに脈波は急激に上昇し,頂点附近に二つの山percussion waveとtidal waveを作る。若年正常者ではほとんどすべての例でpercussion waveはtidal waveより高位にあり,年齢の増加につれ,しだいにtidal waveの高位になるものが増して来る。二つの山の間には時にmidsystolic dipが形成される。頸動脈脈波はtidalwaveを作った後急激に下降し,切痕incisuraに達する。切痕は大動脈弁閉鎖に基因する振動であり,脈波はこれにより収縮期と拡張期に境される。拡張期初期では脈波は再び少し上昇し,dicrotic waveを形成後,ゆるやかに,次の脈波の上昇脚まで下降する。
頸動脈脈波の計測値としてもっとも頻用されているものは,脈波立ち上りから切痕までの時間,駆血期ejection timeであるが,これについては別項で取り上げられている。
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