特集 第8回日本臨床眼科学会
原著〔一般講演〕
(31)眼外科に於けるクラーレ・アキネジア—附:眼輪筋の筋電図及び電気刺戟閾値測定
鴻 忠義
1
1千葉大学医学部眼科
pp.270-275
発行日 1955年2月15日
Published Date 1955/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202121
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Curare1)2)3)は古くから南米土人が狩猟又は戦鬪に於ける矢毒として用いたもので,その貯蔵の方法により,竹筒Curare,瓢Curare,及び壺Curare等と呼ばれて居り,此等の主作用は河豚毒と同様に運動神経の末端に作用するもので藥理学及び生理学実驗に於ては寔に興味深いものがあつた。而し乍ら,河豚毒がTetradotoxin,或はHepatoxinとして臨床にも用いられたのに反し,Curareは純粋抽出が出来なかつたので僅に破傷風の治療に使用されたと言う報告があるに止り,広く臨床に用いられることは無かつた。所が1935年に竹筒Curareからその有効成分として,d-Tubocurarineが抽出分離され,その強度も一定するに及んで欧米の外科並びに眼科に於て用いられる様になつた。
Curareの主作用は脳神経に支配される筋,次いで四肢,躯幹筋最後に呼吸筋を麻痺せしめるが鎮痛作用は無いので,外科眼科で用いられるのは麻酔の目的ではなく筋弛緩作用を利用するわけである。使用に際し最も警戒を要するのは呼吸麻痺が来ることであるが,大量に用いなければ危険はなく又,体外への排出も迅速であるので,その禁忌さえ誤らなれば比較的安易に用いられる。それ故他の方法にによるAkinesiaが出来ない時或は好ましくない様な場合にCurareにより簡単に目的を達することが出来るので外科に於て用いられる様になつた由縁である。
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