綜説
英國,獨逸,瑞西,米國を巡りて(3)
呉 基福
1
1臺灣大學
pp.293-299
発行日 1953年7月15日
Published Date 1953/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201527
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Overcoatを着てもまだ肌寒い5月の寒風に吹き曝されながら英國南岸の白いCliffを振り返り見つゝDoverから海峡を横斷する事4時間Ber-giumのOstendへ3日の午後8時に入港した。全く勝手のわからない地で,しかも一人旅は心細かつた。Passportや荷物の検査はいたつて簡單であつたが上陸早々すぐにも馴れない獨逸語を使用せねばならなかつた。國際列車に乘り込もうとしたらConductorから2 cillings (約100圓)のtipを要求された。Reserved seatの手數料だと説明したが1列車にたつた數十名の旅客では明らかに不當な要求であつた。日曜日のせいだと思うのであるが通過する驛々及びブラツセルは人影が極めてまばらで奇妙な程に靜寂な淋しい國である樣な印象を受けた。國境都市Aachenを通過したのが午前1時で此處で又Passportと荷物の検査を受けた。簡單であつたがとにかく面倒で世界に國境がなければどんなにか旅に都合がよいかと考えた。Köln着が午前3時であるから其儘一睡もせずに目的地に着いた。夜半というのに驛の構内は煌々として明るく賣店は開かれていたために何んとも言われぬ安心感を得て食堂で手紙を書きながら夜明けを待つた。此れが英國ならば午後5時頃にはすでに店閉い,8時頃には食事をとる事さえ困難であつて夜の英國は實に寂漠たるものであつた。
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