綜説
英國,獨乙,瑞西,米國を巡りて(其の1)
呉 基福
1
1日醫大眼科
pp.224-229
発行日 1953年3月15日
Published Date 1953/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201442
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
私は昨年歐米眼科學勉學のために臺灣を旅立つて以來英國,獨乙,瑞西,米國を巡る事1年有餘,貴重なる經驗を積んで此處に6カ年振りで再度日本を訪れた。此旅はけつして楽な旅ではなかつたが私の訪問した國々の各大學は等しく廣く門戸を開いて學問に國境は無く,個人的の交宜に於ても數多くの友を得て好遇を受けた事は私にとつて極めて愉快な事であつた。殊にLondon大學のDav-enport氏,Bonn大學のMuller教授,Zurich大學のAmsler教授の誠實と謙虚,親切さは私に深い印象を與えてくれた。
限られた短い間に一國の眼科學の概要を把握する事は非常に困難である。幾つかの斷片的な事柄が吾々に誤つた印象を與へるので,吾々の批判力を確固たる基準に置かなければ,やたらな禮讃と無意味な模倣,無知と自尊大に陥入り易い。此の意味に於て私は諸國の眼科の外觀を見るよりも先ず其國の醫學の制度と學者及び設備と研究業績に出來得る限りの注意を拂つて來た。各國の歴史が示す如くにこれらの事柄も特異的である。其の各々のもつ社會に根ざしたもつともよいと思われる事が産生されるものであつて,他の國家にそのまま當てはまるべきものではない。こういう觀點から私は私及び私の住む社會にもつとも適切且つ有益と思われる事を求めて旅を續けたのであつた。しかし以下私の述べ樣とする事はけつして私の欲する樣な完全なる客觀性のものではあり得ない。此事を讀者は御諒承の上批制をして頂きたい。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.