銀海餘滴
癌!!
瀬木 三雄
pp.292
発行日 1953年7月15日
Published Date 1953/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201526
- 有料閲覧
- 文献概要
1951年,歐洲の天地が第一次世界大戰の砲煙に包まれていた頃,兎の耳にタンネンにコールタールを塗りつづけていた東大病理學教室の山極教授は,遂にここに人工的に癌を作る事に成功された。
それから15年後英國ロンドン癌研のケンナウエイは,このコールタールの發癌有效成分をとり出し,癌研究に轉期を畫した。1932年東京佐々木研究所に於て,佐々木隆興薄士の指導の下にネズミに赤い色素オーアミドアゾトルオールをくわしつづけていた吉田富三博士は,ネズミの肝臓に癌をつくる事に成功した。人工的に「内臓」に癌をつくる事にはじめて成功した偉大な記録である。この頃英國のクック等はコールタール系の研究を,更に進め日英の學者による人工癌作成の競爭時代が現出した。この時代の我國學者のこの分野における活動は1900年のはじめ頃において,獨佛の學者に混つての北里,志賀,秦等の細菌學者の活動のそれにも比すべきものがあつた。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.