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アメリカ人の衣・食・住物語—(No. 1 衣生活の巻)
瀬木 三雄
pp.30-32
発行日 1955年3月1日
Published Date 1955/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200807
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私は,昨年の夏から秋にかけて,15年ぶりに米国を訪ねる機会を得た進歩の早い米国のことですから.この間にさまざまの変化がみられた.このうち衣・食・住に関係の深い問題のいくつかを紹介してみよう.
私が,昭和14年,欧洲の帰り途にこの国を訪ねたときには,世界の文化国の大部分の地域では,女性はスカートを用いていた.私は欧洲のさまざまな国を訪ねた後,大西洋を渡つて,米国に上陸,米大陸を横断して,米国の大平洋岸カリフォルニア洲南部に来たとき,はじめて,ここで女のズボン姿を見かけた.この女の見慣れない姿は,当時ずい分異情に感じたものである.やがて欧洲に戰爭がおき,戰禍が世界に拡がるにつれ,何かと活動に便利な女のズボン姿は,おそらく世界の多くの国にひろがつたものと思う.日本にもやがて伝つて来て,日本古来のモンペ姿と,ズボン姿は,相混つて,いわゆる防空服装となり,戰時の女性風景となつた.それはともあれとして私の診断に間違がなければ,女のズボン姿は,そのげんしようを,巴里ではなく,ホリイウッドのあるカリフォルニア洲におくものの様である.今は我国ではごく普通になつた男の開襟シヤツも米国に源を発している様である.やはり昭和14年頃日本や欧洲では,まだ開襟シヤツはなく,日本では汗を出し乍らワイシヤツ・ネクタイ姿でなければ,礼を失する事となつていた.この時,ニユーヨークなどでは即に開襟シヤツがはやつていた.
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