特集 助産の変遷
妊産婦死亡と助産婦の注意
瀬木 三雄
1
1東北大学
pp.40-45
発行日 1956年7月1日
Published Date 1956/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201085
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我国における出生1万についての妊産婦死亡率は,昭和28年に於て,米国の3倍に上る.即ちこの年の我国のこの死亡率18.06%に対し,米国6.12%である.戦前には我国の死亡率の方が米国より低かつたことを想うと,この大きな差が生じたことは遺憾にたえない.我国の妊産婦死亡数は最近1年約3000人であり助産婦の方が実際妊産婦の死亡に直接することはそれ程多くはない.1万回の出生児に対し18人という死亡であるから,約500人の出生児に対し1人の死亡があるという訳である.だから多くの助産婦の方は長い年月の間に1例にでっかされるという程度であろう.しかし,一方考えてみると,3000人という数は決して尠いものではない.ここに3000人の妊婦の死体が眼前に横わつていると想像したらどうであろう.今,日本で3000人を収容する講堂は少い.日比谷の公会堂はそれに近い数が収容できるであろう.あの大きなホールに全部妊婦の死体が満されている—それも1年の間に死ぬ者の数である.気持の悪い話であるが,しかしそれは嘘の話ではない.3000という数は決して少くない.我国に比して出生が100万以上も多い米国でも2400人位しか死なない.我国の妊産婦死亡はもつと減らさねばならない.減らせる筈である.
米国の妊産婦死亡が非常に減つた原因の一つとして病院分娩の普及が当然あげられる.
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