特集 未熟児
未熟児などの意義について
瀬木 三雄
1
1東北大学
pp.6-10
発行日 1956年8月1日
Published Date 1956/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201097
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未熟という言葉について,私は一寸面白い思い出がある.昭和29年夏,私はワシントンの郊外のある下宿に1ヵ月ばかりいた.ここの主人は人類学者であるが,ペルーに出かけてインカ国の遺跡研究に余念がなく,家族だけがのこっている.18才になる娘がある夜テレビを見乍ら母親と口論している.アメリカの国のことでもあり,娘も18才にもなれば遊びに出たい.しかし,母親が八釜しやで仲々それを許さない.母親の言分では18才ではまだ"未熟"であるというのである.私はこの口論を聞き乍ら未熟という言葉は,未熟児の場合だけでなく,大人になる頃にもう一度つかうことがあるということを知つた次第である.
「未熟児」という言葉は国際統計上の用語として一応の定義がなされている.昭和25年(1950年)から国際的に用う疾病の統計分類法をきめる相談会が昭和22年厚生省で開かれたことがある.世界保健機関(W. H. O.)から,占領軍司令部を通じて厚生省に送られて来た原案について,日本側として検討を加える会である.この会で日本が非常にまじめにこれを検討したことはW. H. O. の委員長をしていたストークス(英国)も,ある英国で発行された本で特に強調していた程である.この時私は産婦人科関係の委員長,小児科関係の委員をしていた.私は,斎藤文雄,樋口一成博士とともに,母子関係の項について研究した.
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