症例集
光芒の研究
山森 昭
pp.135-138
発行日 1950年4月15日
Published Date 1950/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200557
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暗い所て遠方の燈火の如き点状の光源を眺める時,其光源よる発散する線状の像即ち光芒が認められる.之に就ては古來幾多の研究はあるが,最近中村文平教授が精細に研究している.此研究は定性的に極めてよく行届いているが,余は更に定量的に研究した.先ず中村教授の論文の大要を述べる.氏は光芒を次の4種に分類している.(A)睫毛によるもの,之は睫毛表面よりの反射によるものと廻折によろものとの2種が合一して成ると考えている.又光源に近い視角の部分に正規スペクトルが生じて見える事も述べているが,其理由に就ては明瞭を欠いている.(B)眼瞼によるものとして.瞼縁にプリズム状に溜つた涙液によつて,瞼縁に垂直の方向に延びる長い映像に就て述べている.(C)瞳孔の一部を覆う時消失するもの,即ち発光体より発し,此を環状に圍繞する線状体は水晶体乱視等による屈折性のものとしている.(D)瞳孔の大部分を覆うに非ざれば消失せざるもの,小さな極めて光度の強い光源を凝視する時,此を環状に囲繞する細い長い顯著な色彩を有する線像が見える.此はヘルムホルツも述べて居り,瞳孔縁で光が廻折する爲であるとしている.余が実驗を行い,理論的に考察した所,此論旨は正しいと考えられるが,余の実驗しだもので,氏の行つて居ない実驗及び数量的の考察を加える事の出來たものを述べる.
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