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はじめに
眼は炎症や外来性抗原などから自己を守るための特殊な防御機構を持つ場所immune privilege site(免疫特権)の1つとして考えられている1)。多くの眼組織や前房などの微小空間はimmune privilege siteとして免疫学的な抑制機能を持ち,炎症細胞から眼組織を守り,視機能を維持する働きがある。しかし,炎症の程度がひどい場合あるいは宿主の免疫状態に異常がある場合など,眼内の炎症抑制機構を上回る炎症が起こり組織破壊が生じると,その眼は失明あるいはそれに近い状態に陥る。
現在では,ぶどう膜炎や眼内炎などの難治性眼内炎症性疾患に対して,自己免疫が引き起こす非感染性ぶどう膜炎・眼内炎にはステロイドや生物製剤などの免疫抑制薬,感染性が主な原因となる感染性ぶどう膜炎・眼内炎には,その抗原がターゲットとなる治療薬,例えば抗菌薬や抗ウイルス薬などが中心となり視覚機能を守るための治療が行われる。しかし,実際は,眼内炎症コントロールに苦慮する症例も少なくない。治療に苦慮する主な原因は,これらぶどう膜炎の原因が多種多様であること,原因不明例がいまでも多く存在すること,治療薬の副作用が出てしまうこと(特に全身投与の場合)などが挙げられる。
眼色素上皮細胞(ocular pigment epithelial cells)は虹彩,毛様体,網膜の一連の層で構成される。米国のStreileinらを中心としたグループは正常マウス眼から眼色素上皮細胞をin vitroで樹立し,それらがT細胞を抑制することを報告した2~4)。その後,筆者らはStreileinらの色素上皮細胞の手法を引き継ぎ,眼の免疫機構における眼組織の役割と分子機構,特に眼色素上皮細胞の抑制能を中心に研究を行ってきた。今回は,眼色素上皮細胞の抑制能とそれらにより誘導される制御性T細胞の誘導機序および機能について,また将来の難治性眼内炎症性疾患に対する治療応用への可能性について解説する。
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