連載 もっと医療コミュニケーション・16
「思いやりの人間関係スキル」は医師を救う―思いやり表現の三つの構造
佐藤 綾子
1,2
,
綾木 雅彦
3
1日本大学藝術学部
2国際パフォーマンス研究所
3昭和大学藤が丘病院眼科
pp.586-589
発行日 2009年4月15日
Published Date 2009/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102687
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誰でも思いやりがほしいことに変わりはありませんが,普通の状態の人(健常者)にとって思いやりが必要である以上に,身体や心を病んで苦しみ病院を訪れるさまざまな患者には人の何倍もの思いやりが必要です。そして,その思いやりの表現は,実は患者のためだけではなく医師のためにもなるのだということを,今回は具体的かつ科学的に,しかも省エネで実行できるようにわかりやすく解説しましょう。
たとえば,私がよく行く聖路加国際病院は,ナースのほかに薄いピンク色の服を着たボランティアが外来スペースのあちこちに立っています。会計をする自動精算機のところ,ちょっと場所がわかりにくい廊下の曲がり角にこのボランティアが立っているのです。そして,バッグの中からゴソゴソと老眼鏡を探し出し,やっとの思いで自動精算機に指を伸ばしたものの,さてどこを触っていいのやらわからない,という様子をしている高齢の患者がいると,すぐに駆けつけて,「このようにやったらいいのですよ」と文字通り手取り足取り教えてくれます。そのときの患者のホッとした顔は横で見ていても嬉しいものです。
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