グラビア
大言小言—病人への思いやり
田宮 虎彦
pp.113
発行日 1968年10月1日
Published Date 1968/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914174
- 有料閲覧
- 文献概要
病気になった人が医師や病院に診断や治療を受けにいく時,その人はもうほんとうは正常な人ではない。もちろん何でもない軽い病気の時は,そんな心の動揺はないだろうが,少しでも重い病気にかかったり,またその心配がある時は,病人の心は不安におびえている。医師や看護婦の立場から見れば不安がる必要などないと思われる症状でも病人の方では苦痛や不安から救われたいと必死に心で祈っている。そんな時には,看護婦さんの表情一つが病人の心の支えになる。たとえば看護婦さんが繃帯をとりかえてくれることだけで,病人には,自分の病んでいるところが眼に見えてなおっていくように思われるのである。病人がもし幼児なら,母親にすがりついていくように看護婦さんにすがりついていくだろう。こういう病人の異常な心理を,看護婦さんたちはどの程度知っているだろうか。看護学や看護法などという勉強をしているのだから,それは教えられて知っているのであろう。だが,自分が病人になって,自分が苦しんだ経験がないかぎりは,それは単に知識として知っているにすぎない。病人の不安や苦痛の深さはわからない。
看護婦さんの仕事は見ているだけで重労働とわかる。その上,素人など近よることもいやな病人の血や膿や汚物などを処理せねばならない。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.