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あとがき
中澤 満
pp.1232
発行日 2019年9月15日
Published Date 2019/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410213274
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臨床眼科9月号をお届けします。今月も連載,臨床報告に第72回日本臨床眼科学会講演集が続きますが,今月号の1つのトピックスに炎症性眼疾患が挙げられます。「今月の話題」では,戸所大輔先生に「細菌性転移性眼内炎」をご執筆いただきました。すでに全身症状を伴って他科から眼科へコンサルトされる場合は比較的診断は容易ですが,もし眼症状が初発で眼科を初診された場合には他のぶどう膜炎との鑑別が重要になるとのご指摘に,「なるほど」と思いました。「眼炎症外来の事件簿」では,長谷川英一先生が「網膜剝離を伴う視神経乳頭炎」を報告されています。臨床像は広範な乳頭炎を伴いますが,バルトネラ感染に伴う猫ひっかき病という診断名が頭に浮かぶかどうかが診断の鍵を握ります。猫ノミからバルトネラに感染した猫や稀に犬の引っ掻き傷や咬み傷からヒトに感染するようですので,その可能性の有無について検索を進める必要性が指摘されています。適切な治療によって非常に良い経過をたどるという点も眼科医の責任たるや重大というところです。もう1つは西村英里先生らの「脈絡膜新生血管を合併した散弾様網脈絡膜炎の1症例」です。この疾患は,RyanとMaumeneeによって1980年のAJOに初めて報告されたもので,欧米では教科書にもよく記載されていますが,本邦ではまだ15例程度しか報告されていない稀な疾患です。脈絡膜新生血管を伴った例は初めてということで,貴重な症例報告だと思います。「この病気は日本人にはみられないのではないか」と高を括っていると見逃してしまう可能性もありますので,注意しておく必要もあるでしょう。
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