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あとがき
中澤 満
pp.112
発行日 2007年1月15日
Published Date 2007/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101763
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1982年のことだった。両眼の白内障に対して眼内レンズ移植手術を受けて,両眼とも裸眼遠方視で1.0の視力となったある患者が,外来の待合いで老眼鏡も掛けずに文庫本を読んでいる姿に驚いた。単焦点の眼内レンズでは遠方視,近方視ともに裸眼視力が良好になるはずがないと思っていたからだ。
そこで眼内レンズ術後の患者30名に協力していただき,他覚的屈折度から求められる焦点と石原式近点計で求められる自覚的な近点とから,見かけ上の調節力を計算してこの値を眼内レンズ移植眼の偽調節と称した。総計40眼について偽調節を求めたところ,焦点から近方方向に平均約2Dの偽調節があることがわかった。さらに検討すると,偽調節値は瞳孔径に反比例する傾向が最も顕著であることがわかり,偽調節は眼の焦点深度に深く関連する現象であると結論した(「AJO」1983,「IOVS」1984)。ところが実際の人眼での焦点深度はせいぜい0.05D程度であるとの指摘を受け,その本態は完全には解明されずに今に至っている。
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