特集 網膜硝子体診療update
Ⅳ.注目の疾患
5.その他
網膜硝子体界面症候群―特発性黄斑前膜
近本 信彦
1
1山口大学大学院医学系研究科情報解析医学系学域眼科学分野
pp.362-366
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102521
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はじめに
網膜硝子体界面症候群は,網膜と硝子体の境界面を病変の場とし,黄斑円孔,偽黄斑円孔,黄斑前膜や硝子体黄斑牽引症候群などが含まれる。網膜の表面はMüller細胞の基底膜である内境界膜によって覆われ,硝子体皮質は内境界膜に接し,境界面を形成している。硝子体皮質は硝子体の最外層であるが,黄斑部では硝子体皮質の前方に液化腔(後部硝子体皮質前ポケット)がある。内境界膜と硝子体皮質の境界部において硝子体が収縮し,牽引することによって網膜硝子体界面症候群が生じる。
硝子体黄斑牽引症候群は,黄斑部において硝子体皮質が黄斑で癒着し,その周囲で後部硝子体剝離が生じ,中心窩が前後方向に牽引されることによる。不完全な後部硝子体剝離を伴った黄斑前膜の病態と同様であり二次的に黄斑浮腫などをきたすことがある。一方,黄斑前膜(epiretinal membrane of macula:EMM)は,黄斑部を中心に網膜上に残存した硝子体皮質が内境界膜上で細胞増殖と線維性結合組織を形成して肥厚・収縮する疾患であり,特発性と網膜静脈閉塞症,ぶどう膜炎,網膜光凝固や冷凍凝固治療などに引き続き生じる続発性がある(表1)1)。本項では,特発性黄斑前膜について考察する。
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