特集 網膜硝子体診療update
Ⅳ.注目の疾患
1.加齢黄斑変性
抗VEGF療法
若林 卓
1
,
五味 文
2
1社会保険紀南病院眼科
2大阪大学大学院医学系研究科感覚器外科学講座(眼科学)
pp.233-238
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102493
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はじめに
血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)は血管新生および血管透過性亢進にかかわる重要な生理活性因子として1980年代に同定され,その後の研究によって加齢黄斑変性における脈絡膜血管新生の病態を推進する中心的な役割を担っていることがわかってきた(詳細は別項を参照)。脈絡膜新生血管モデルにVEGFの発現が確認されていること,さらにはVEGFシグナルの阻害により実験的脈絡膜新生血管が抑制されたという実験結果からもVEGFが脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization:CNV)の発症や活動性に直接関与していることが裏づけられている。
こうした背景から近年,滲出型加齢黄斑変性に対する新しい薬物治療としてVEGFを標的とした抗VEGF療法が注目されるようになった。VEGFの生理活性を抑制する最も直接的な方法であり,すでに複数の薬剤が臨床使用されその有効性が報告されている。外科的治療や光線力学療法(PDT)に比べ侵襲が少なく今後の加齢黄斑変性に対する中心的治療法になると期待されるが,一方で適応症例の選別,投与のタイミング,反復投与による合併症の可能性など検討すべきことも多い。本項では,代表的な抗VEGF薬剤について,その有効性や問題点について概説する。
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