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はじめに
糖尿病網膜症に対する硝子体手術は,手術顕微鏡や眼内照明,手術機器や器具などの進歩に伴い安全性は向上しているが,依然として増殖硝子体網膜症と並び,最も難易度の高い手術の1つであることは変わりがない。特に手術操作で困難となる最大の要因は術中の出血である。
増殖糖尿病網膜症においては線維血管増殖膜を伴う場合が少なくなく,増殖膜を除去する必要がある。増殖糖尿病網膜症の増殖膜は新生血管より構成されており,増殖膜を分割(segmentation)や分層(delamination)の手技で除去する際には新生血管も切断するので出血は避けられない。出血した際にはジアテルミーで直接凝固したり,灌流圧を上げたりして止血を図る。止血するまでの間に出た血液は網膜表面を広がって凝血し,薄い膜ができる。出血により視認性が低下し手術操作がやりにくくなり,また出血して薄く広がった凝血の膜を吸引除去あるいは切除する際に,再度出血することがめずらしくなく,再度,出血の吸引除去が必要となる。この繰り返しで手術時間が長くなる。
この出血の問題が解決されれば糖尿病網膜症に対する手術操作は平易に安全に行えるようになり,手術成績の向上も期待できる。出血の原因となっている新生血管が消退すれば術中の出血が減少することは予想される。網膜光凝固により新生血管の活動性は軽減する1)が,糖尿病網膜症の術前は硝子体出血や網膜前出血や牽引性網膜剝離で網膜光凝固を十分に行うことが難しい。最近,術前に新生血管の活動性を抑制し,術中の出血を軽減する目的で,抗VEGF薬の1つであるベバシズマブ(アバスチン®)2,3)が手術補助剤として術前に硝子体内に投与されるようになり,注目を浴びている。
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