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はじめに
加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)は欧米をはじめとした先進国において成人の失明や視力低下の主原因となっており,近年ますます増加傾向が認められる。AMDに関する疫学はその危険因子を明らかにし発症を予防するのに役立つ。AMDの疫学を知るには一般住民を母集団とした研究(population-based study)が有用である。
欧米では数多くの一般住民を母集団とした研究(population-based study)によるAMDの有病率や発症率および危険因子に関する報告がある。なかでも,ある程度大きな人口をもち,かつ人口の移動が少ない地区を対象に参加率の高い研究を行っている大規模疫学研究として,米国のFramingham Eye Study1)やオーストラリアのBlue Mountains Eye Study2),オランダのRotterdam Eye Study3),西インド諸島バルバドスのBarbados Eye Study4)などがある。
わが国においてAMDの疫学研究として一般住民を母集団とした研究(population-based study)が行われているのは,福岡県久山町の一般住民を対象に行われている久山町研究5)がある。久山町研究は福岡市東部に隣接する人口約7,500人の都市近郊型農村地域で行われている追跡研究で,久山町の人口の年齢分布や職業構成および生活様式や疾病構造が全国統計と差異がなく,わが国の平均的な集団を対象とした研究である。1998年からわれわれ九州大学眼科学教室はこの久山町研究に参加し,40歳以上の久山町全住民を対象に前向きな追跡調査を行い,さまざまな眼科疾患の有病率,発症率および危険因子を調査してきた。各国で行われているpopulation-based studyによる大規模疫学研究の結果とわが国で行われている久山町研究の結果を比較検討しながら,AMDの疫学について概説する。
以下の順でAMDの疫学を理解していくとわかりやすい。
1)現在どれぐらいの患者がいるのか(AMDの有病率)
2)どれぐらいの割合で患者が増加しているのか(AMDの発症率)
3)どのような人がAMDにかかりやすいのか(AMDの危険因子)
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