特集 網膜硝子体診療update
Ⅳ.注目の疾患
1.加齢黄斑変性
病態研究に関するトピックス
石田 晋
1,2
1慶應義塾大学医学部稲井田記念抗加齢眼科学講座
2慶應義塾大学総合医科学研究センター網膜細胞生物学研究室
pp.200-207
発行日 2008年10月30日
Published Date 2008/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102486
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はじめに
加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)は,近年かつてない高齢化社会を迎えたわが国においても,欧米並みの深刻な失明原因として認識されるようになった。急速に進行し重篤な視機能障害をきたす滲出型AMDの病態として脈絡膜血管新生(choroidal neovascularization:CNV)は,新規治療の開発を目標に成因解明が研究対象となってきた。その結果,光線力学療法に続いて,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)を分子標的とした抗VEGF薬物療法が確立した。しかしながら,治療効果は十分に満足できるものではなく,さらなる病態理解が求められている。
近年,CNVの病態メカニズムとして,VEGFを代表とする血管新生関連分子の相互作用が解明されたことに加え,炎症細胞や補体系,さらには組織レニン-アンジオテンシン系の関与といった新しい知見が続々と登場している。これらの知見は,細胞生物学的研究,臨床疫学的研究,分子遺伝学的研究など多方面からの研究アプローチの成果である。これらの新しい知見を統合すると,「AMDは炎症病態である」という考え方につながる。いうまでもなく,AMDの発症メカニズムには遺伝的素因に加え多様な環境要因が関与しているが,誌面の限られた本稿では「炎症」をキーワードに焦点を絞り,AMDにおけるVEGFからレニン-アンジオテンシン系の関与まで最近の病態理解の流れを紹介する。
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