婦人の目
夏の話題から
山主 敏子
pp.57
発行日 1969年9月1日
Published Date 1969/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203806
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60歳以上の婦人の労働力
婦人が働ける能力を持つのはおおむね60歳までで,それ以上の婦人には経済的評価はできないという意味の判決を東京地裁で下して婦人のあいだで大きな論議のまとになっている.この訴訟は交通事故で死んだ浦田ウタさん(64)の夫と子どもたちがタクシー会社を相手取って損害賠償の支払いを求めたもので,これに対し荒井裁判官は,死亡した主婦が内職をしていた場合,お手つだいを雇ったとき,その主婦が家事以外の一般的労働ができる程度の年齢であったときだけ経済的評価ができるとしてこれにあてはまらないので請求を棄却したという.
これまでにも主婦の家事労働については,年齢に関係なく評価できないとした判決,あるいは派出婦の給料を基準に認めた例などがあるが,裁判官によって考え方がまちまちである.しかし,60歳以上だから働く能力がないときめた例ははじめてである.はたして60歳以上の婦人は働けないのか,これは裁判官が婦人の実状について全く無知をばくろしたこと以外のなにものでもない.
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