やさしい目で きびしい目で・94
ひと言(1)
祐森 弘子
1
1祐森クリニック
pp.1941
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101972
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私たちは,日常,患者さんからさまざまなことを教えていただいている。「これは,もらった!」と気づくか気づかないか,受け取る側の個人差はあるかもしれないが,言葉もその1つだと実感している。
眼科の場合,視力が特に重要なのは,自動車運転免許の更新のときである。診療中に「車の免許の更新はいつですか」との私の質問に「今年です」と患者さんが答えられるので,“いまは免許の更新の話をしているのだなぁ”とお互いわかっているつもりであった。しかし,その次に「おお(大)型ですか」と聞くとなぜか「いいえ,私は,えい(A)型ですわ」との答えが返ってきてしまった。話の流れが,わかっているのは私だけだったのだ。私は,“違う,違う。いまは車の話ですよ。”でも,なるほど,こういう捉え方もあったのかと,「おお」という言葉について一人納得しつつも,笑うのを相当我慢して「普通免許ですね」と問い直した。「そう,普通免許です」と,やっと予想どおりのごく普通の答えが返ってきた。当の本人は,この面白さに気づいていない様子であったが,もし私が,「免許は大型ですか」と主語をしっかり言えば,こういう展開になっていなかっただろう。
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