連載 アーキテクチャー 保健・医療・福祉 第18回
使ってみてひと言
小川 一誠
1
1愛知県がんセンター
pp.385
発行日 1996年4月1日
Published Date 1996/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901785
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病院の改築のために患者の意見をアンケート調査し,患者にやさしい病院となることを設計の基本としたとされている.立体駐車場から入る所は外来棟の2階,左手に案内,薬局,会計,受付と並ぶ.受け付けをすませると同じ階の内科系外来,放射線診断部へと進む.外科系外来へはエスカレーターを利用する.患者の流れはスムースであり,現在のところ患者の評判は非常に良い.強いて欠点を挙げるとすればトイレがもう少しあったほうが便利と思う.
3階は臨床検査へともつながっている.廊下を歩きつつ中央を見るとアトリウムがある.ここは1階から4階までの吹き抜けとなっており,ベンチが置かれ,家族との語り合いの場であるとともに,朝など内部を散歩している患者さんが多い.アトリウムは機能としては採光にも用いられており,病院の中央でまさにシンボル的な憩の場である.
広いエレベーターホールから,病室へと上がる.8階東,9階東西が個室で,他は一般病室である.ナースステーションはオープンシステムとなっており,患者とナースとのコミュニケーションが気楽にとれる.病室の入口は引き戸となっており,余分なスペースが不要で,しかも,開閉のわずらわしさがない.トイレ,手洗いなどの段差をなくして,点滴を持った移動を容易にしてある.そしてエレベーターを降りた中央と東西の病室の奥にデイルームが設置されており,午後など家族と談笑する姿を見る.
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