特集 眼感染症診療ガイド
I.眼感染症のトピックス
マイボーム腺炎角膜上皮症
鈴木 智
1
1京都府立医科大学眼科学教室
pp.54-59
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101416
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
日常臨床では,しばしばオキュラーサーフェス(ocular surface)に軽度の炎症を伴った角膜上皮障害を認める。このような場合,ドライアイ,アレルギー性結膜炎,ブドウ球菌性眼瞼結膜炎などを鑑別診断として考えながら診断していくことが多いが,診断に基づく治療が奏効せず,角膜上皮障害が遷延したり,寛解・増悪を繰り返す症例に悩むことがある。このような原因の明らかでない角膜上皮障害を生じる疾患のなかに,マイボーム腺の炎症が関連している疾患があると筆者らは考え,それを「マイボーム腺炎角膜上皮症」と呼ぶことを提唱した1)。McCulleyらの提唱している「閉塞性マイボーム腺機能不全に伴う蒸発亢進型ドライアイによって生じる角膜の点状表層角膜炎(meibomian keratoconjunctivitis)」2)とは異なり,「細菌感染に伴って生じるマイボーム腺そのものの炎症が角膜上皮障害と関連している」というのがこのコンセプトの基本である。このコンセプトを用いることによって,難治性の角膜上皮障害を的確に治療できることがあるので筆者らは正しいと信じているが,角膜専門医の間でも必ずしも広く認められたものではないということを付記しておく。
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.