特集 眼感染症診療ガイド
I.眼感染症のトピックス
新興・再興感染症
林 皓三郎
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1Immunology and Virology Section,Lab. Immunology,NEI,NIH(USA)
1Immunology and Virology Section,Lab. Immunology,NEI,NIH(USA)
pp.60-65
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101418
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はじめに
新しいコロナウイルス(SARSウイルス)による肺炎は,病因ウイルスの迅速な伝播力と強い病原性によってすでに8,000人を超える感染患者と800人以上の死亡者を出している。各地で懸命の防疫対策が取られようやく終息したものの,次の流行がまたいつ起こるか予断を許さない状況である。原因病原体の同定・診断は極めて迅速に行われたが,その治療薬・ワクチンの開発はどんなにうまく事が進んだとしても2~3年はかかると考えられる。こうした情勢から国際的に旅行が制限され,旅客機の運行回数が減り,政治経済を含む社会生活全般にわたる大パニックが引き起こされていて,その影響はイラク戦争以上であるといわれている。本来鳥の感染ウイルスであったものが,何らかの機序でヒトに広がったものであるらしい。このことは感染症が過去の病気であるという思い込みが,いかに的はずれなものであったかをまことに如実に示している。
公衆衛生の改善,抗生物質・抗菌薬・抗ウイルス薬の発達,ワクチンの開発と普及,迅速かつ正確な診断法の進歩などが感染症の予防・治療に貢献してきたことは確かであるが,その一方では新たな感染症(新興感染症)が次々に報告され,いったん下火になっていた感染症がまた新たな装いで(薬剤耐性株として)現れている(再興感染症)のが現状である。
過去25年ほど(1970年頃以来)の間に新たに問題になってきたこうした疾患は40種類以上に上る(表1)。
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