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緒 言
ハイドロジェル眼内レンズ移植を行った1年後,光学部にカルシウム沈着が起こり高度な混濁を生じた症例を経験したので報告する。
症 例
患者:52歳,女性
初診:1999年5月19日
主訴:両眼視力低下
既往歴:25年来の糖尿病。2001年5月より透析を導入した。
初診時所見および臨床経過:矯正視力は右0.4,左0.3。両眼に増殖糖尿病網膜症があった。両眼に汎網膜光凝固施行後,硝子体手術を当科で施行した。左眼は1999年9月14日に,右眼は10月19日に行った。その後,白内障による視力低下が進行したため,超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入術を近医で施行した。左眼は2001年7月23日に,右眼は8月27日に行った。使用したのはハイドロジェル眼内レンズ(ハイドロビュー眼内レンズ(R)H60 M,Bausch&Lomb Surgical社)であった。術後最高矯正視力は右0.2,左0.4となった。
現病歴:2002年8月13日に両眼視力低下を自覚し来院した。矯正視力は右0.1,左0.3であった。両眼とも眼内レンズ光学部の前後面に白色の微細顆粒が均一に沈着していた(図1,2)。眼内レンズの支持部に,沈着物はなかった。右眼にNdヤグレーザーにて後発白内障切開術を施行したが混濁は改善せず,その後も視力は悪化し続け,9月5日に矯正視力右0.01,左0.07と低下した。そこで10月1日に左眼に,10月8日に右眼に眼内レンズ摘出術+眼内レンズ挿入術を施行した。右眼は毛様溝,左眼は囊内に疎水性アクリルレンズ(アクリソフ(R),アルコン社)を挿入した。術後,矯正視力は右0.2,左0.3と眼内レンズ混濁前の視力に戻った。
病理所見:摘出した眼内レンズ光学部の微細顆粒状沈着物は,Kossa染色で黒変したのでカルシウム塩であると確認された(図3)。支持部(PMMA製)の表面は染色されなかった(図4)。
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