特集 手術のタイミングとポイント
Ⅱ.緑内障
流出路手術の術後管理と手術の評価―効果をどう判定するか
稲谷 大
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部視機能病態学
pp.80-83
発行日 2006年10月30日
Published Date 2006/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100973
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
線維柱帯切開術の術後合併症とその対処法
流出路手術の代表である線維柱帯切開術(トラベクロトミー)は,濾過手術と比較して,眼圧下降作用がマイルドである反面,視機能に重篤な障害を残すような術後合併症に遭遇することが非常にまれな術式であることが特徴である。手術手技が原因で生ずる術後合併症には,プローブ(トラベクロトーム)の挿入回転の操作に関係するものが圧倒的に多く,主な合併症として,毛様体損傷,デスメ膜剝離,デスメ膜下血腫が挙げられる(図1)。一方,手術手技に問題がなくてもしばしば遭遇する合併症として,術後一過性眼圧上昇と前房出血が代表的な術後合併症として挙げられる。
毛様体損傷は,プローブを挿入する際に,シュレム管内に挿入されず誤って強膜側や毛様体内へ挿入してしまい,それに気づかずにプローブを前房内へ回転させてしまったときに合併する。また,シュレム管に正確に挿入されていても,前房内へ回転させる際に,過度に虹彩方向(下向き)へ回転し続けた場合も虹彩根部にプローブを引っかけて損傷させることがある。虹彩毛様体からの前房出血だけでなく,虹彩根部離断や毛様体解離を合併することもある。虹彩根部離断や毛様体解離が軽度であれば経過観察のみでよいが,毛様体解離が深刻であれば,術後低眼圧が遷延し毛様体の縫着が必要となることもある。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.