特集 手術のタイミングとポイント
Ⅱ.緑内障
薬物療法か手術療法か
相良 健
1
1山口大学医学部眼病態学講座
pp.55-59
発行日 2006年10月30日
Published Date 2006/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100968
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はじめに
緑内障の治療は薬物療法と手術療法が選択できる。緑内障治療は白内障とは異なり,手術という侵襲的な治療を選択しても,その代償として視力および視野の改善が得られるわけでなく,むしろ視力低下をきたす可能性があると考えられているため,緑内障治療は薬物療法,とくに全身的副作用の比較的少ない点眼治療に依存する傾向が強い。事実,大半の緑内障患者は点眼治療のみで生涯にわたり日常生活に支障をきたさない程度の視機能を維持しうる。
一方,なかにはどうしても緑内障手術が必要な症例は存在する。その場合,手術に踏み切る適切な時期を逃さなければ,新たな治療を受け入れる余裕が術者および患者に与えられ,患者-医師間の良好な信頼関係構築が期待できる。しかしながら緑内障手術の適応として紹介される症例のなかには,もう少し早期に手術に踏み切ることができていればと思う状態にあることが少なくない。とくに末期緑内障に至った症例では,残された視機能の厳しい現状,あるいは必ずしも良好とはいえない治療予後を説明する必要があり,インフォームド・コンセントを得るまでに苦労することが少なくない。前医への不信感,また手術への失望感を吐露されることもある。自験例においても過去の経過を振り返ると,はたして手術時期が妥当であったか疑問符が付く症例もある。したがって緑内障の治療では,どのタイミングで薬物療法から手術に踏み切るかが1つの大切なポイントになる。
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