特集 眼科における最新医工学
III.治療への応用
遺伝子治療
忍足 俊幸
1,2
Sayon Roy
1
1Departments of Medicine and Ophthalmology,Boston University School of Medicine
2千葉大学大学院医学研究院視覚病態学
pp.261-267
発行日 2005年10月30日
Published Date 2005/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100222
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はじめに
筆者らは損傷や疾患によりダメージを受けた網膜・視神経を再生させ,視路を再構築することを目的に研究を行ってきた1~9)。損傷や虚血などのダメージを受けた網膜神経細胞は多くの場合,アポトーシスを起こして死滅していくことが知られている。しかし,直接のダメージによってアポトーシスが誘導される場合と軸索の変性によって二次的にアポトーシスが誘導される場合があり,慢性疾患である緑内障のモデルにおいてもこの二次的に誘導されるアポトーシスが確認されている10)。ダメージによって誘導されるアポトーシスの進行を神経保護的戦略で人為的にブロックすることは可能ではある。しかし視機能の保護まで考えた場合,軸索を再生させ視路を再構築する治療戦略の確立が重要となってくると考えられる。
とりわけ高度に発達し成熟した網膜・視神経を再生させるためには,多角的な治療戦略が必要となる。損傷後の神経細胞を生存維持させ,次いで速やかに軸索再生を誘導し,神経ネットワークを再構築して初めて再生に成功したといえるのである11)。
損傷後の神経細胞の救済なくして視路の再構築はありえない。そのためにはまず,ダメージを受けた神経細胞がアポトーシスを起こすメカニズムの解明が第一である。次いでアポトーシス関連因子を標的にした神経保護的戦略で細胞を生存維持させながら軸索再生誘導の環境を整備する。神経ネットワーク再構築はリハビリである程度カバーできるであろうから,そこに至るまでの環境整備が重要と思われる。今回の総説では神経保護・再生治療戦略において有用と思われるいくつかの遺伝子治療について,筆者らの研究成果を交えて紹介したい。
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