原著
妊娠末期におけるDehydroepiandrosterone Sulfate大量投与の産褥乳汁分泌に及ぼす影響
植田 敏弘
1
,
横山 裕司
1
,
井川 洋
1
,
斎藤 誠一郎
1
,
松崎 利也
1
,
安井 敏之
1
,
三宅 敏一
1
,
苛原 稔
1
,
青野 敏博
1
Toshihiro Ueda
1
1徳島大学医学部産科婦人科学教室
pp.361-365
発行日 1991年3月10日
Published Date 1991/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904929
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分娩第1期に比較的大量のdehydroepiandrosterone sulfate(DHA-S)を単回投与し,DHA-Sの産褥期乳汁分泌に及ぼす影響について内分泌学的な検討を行った。妊娠第37週以降の正常妊婦で,入院時子宮開大度5cm未満の症例53例を対象とした。入院時にDHA-S 400mgないし800mgを30分間で一回点滴静注し,投与量別にDHA-S 400mg投与群(n=11),DHA-S 800mg投与群(n=11),対照群(n=31)の3群に分け,産褥4日目までの乳汁分泌量,1ヵ月後の哺乳状況,血中E2値などの経日的変動を検討した。乳汁分泌量は,産褥0〜4日ではDHA-S投与群が対照群よりも分泌量が少なく,特に産褥2日,3日では有意に低下(P<0.05)していた。また血中E2値は,3群とも分娩前の高値から,胎盤娩出後急速に減少し,その後経日的に漸減していたが,産褥1日および2日でDHA-S投与群が対照群に比較して約2倍の高値を示していた。1ヵ月後の哺乳状況については,3群間に有意差はないものの,母乳栄養の割合は,DHA-S投与群が対照群に比較してやや低い傾向にあった。以上の成績より,妊娠末期に頸管熟化不全の治療にDHA-Sを使用した場合には,産褥初期一過性に乳汁分泌不全の出現する可能性があり,母乳哺育を希望する場合には,この点に留意する必要があると思われる。
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