薬の臨床
Dehydroepiandrosterone sulfateの術後卵巣欠落症および更年期症候群に対する臨床応用
中野 栄喜
1
,
川田 肇
1
,
山田 光興
1
,
五十嵐 辰博
1
Hideki Nakano
1
1金沢大学医学部産科婦人科学教室
pp.749-758
発行日 1971年7月10日
Published Date 1971/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204461
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女性においてもかなり多量のandrogenが分泌され,いわゆる17-ketosteroidとして生化学的に把握され,その一部は卵巣に由来するが,大部分は副腎由来のいわゆる副腎性androgenであり,その主体をなすものはde-hydroepiandrosterone(以下DHAと略)であることは周知のことである。このDHAは直接副腎より多量に分泌され,そのままの遊離型free formでも分泌されるが,硫酸基と結合したdehydroepiandrosterone sulfate(以下DHA-Sと略)という水溶性の結合型conjugateformとしても分泌されており,この両者は体内で互に移行することが知られているが,両者の関係と役割についてはなお確立されていないようである。ただ,DHAは代謝されやすく,DHA-Sは代謝されにくいことから,DHA-Sはprotected precursorとも考えられている。
赤須をはじめわれわれの教室では,早くからこの副腎性androgenとくにDHAの存在意義に注目して一連の研究1)〜11)を重ねてきているが,その結果, DHAは男性化作用が極めて弱く,蛋白同化作用が比較的強い,いわばnatural anabolic steroidとして,また必要に応じてestrogenやtestosteroneなどに転換する,いわばreserve steroidとして,さらにcatabolicな作用を有するcortisolをcontrolするsteroidとして,女子の全身的性的発育,性機能および老化の面で極めて重要な役割を演じているとみなされる。
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