今月の臨床 産科と凝固異常
凝固線溶異常の治療
4.妊娠中毒症(preeclampsia)発症に対する低用量アスピリンの予防効果?—その基礎と臨床
日高 敦夫
1
,
中本 収
1
1大阪市立総合医療センター産婦人科
pp.350-353
発行日 1998年3月10日
Published Date 1998/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903214
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妊娠中毒症の発症は,基本的には子宮胎盤循環障害に起因し,その引き金として,ラセン動脈を含む局所解剖学的血管構築の不全1)や,子宮筋トーヌスの亢進2)などが示唆される.病態として,血管壁と血液レオロギーの障害,つまり血管統合制の失調がもたらされるものと考察できる.なおこうした変化は正常妊娠でも分娩発来の1〜2週前ころよりみられるもので,その程度は軽微なものとして捉えられる.
すなわち,血液の流動性を支配するヘモレオロギーとしての赤血球や白血球の変形能の低下,また血小板や白血球の粘着能や凝集能の高まり,そしてこれらの変化とリンクする血管内皮機能のもつ抗血栓作用や血管弛緩作用の障害などがみられる.こうした血管内皮機能の障害は,NO産生低下3)に加えてPGI2産生低下とTXA2産生亢進がみられ,同時に細胞障害をさらに増悪させるlipidperoxidesの上昇とantioxidantsの低下を伴い4),いっそうTXA2合成を活性化させることになる.
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