今月の臨床 産科と凝固異常
凝固線溶異常の治療
3.術後血栓防止と低分子ヘパリン療法
竹田 省
1
,
木下 勝之
1
1埼玉医科大学総合医療センター産婦人科
pp.342-348
発行日 1998年3月10日
Published Date 1998/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903213
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近年,わが国での食生活,生活習慣の欧米化,摂取栄養量,肥満人口の増加や動脈硬化,高脂血症などの成人病の増加などに伴い,欧米人と同様,心筋梗塞,肺塞栓症など血栓症による死亡率が増加している.下肢静脈血栓症やその重篤な合併症である肺塞栓症は無症候性のものが多く,心疾患,脳血管疾患や糖尿病に合併しやすい.また術後合併症としても重要であり,内科,外科いずれの領域でも問題となっている.とくに悪性腫瘍や高齢者の骨盤外科手術後に発症しやすく,婦人科領域でも術後合併症として注目されるようになってきた.
また産科領域においても,欧米では妊産婦死亡の主たる原因として肺塞栓症は恐れられているが,本邦ではその頻度から軽視されてきた.しかしわが国でも肺塞栓症が問題となってきており,その多くは帝王切開術後で,最近の帝切率の増加傾向を考え合わせると今後の動向が危惧される1,2).出血による妊婦死亡が減少している今日,欧米同様,今後は肺塞栓症が問題となってくると考えられる.
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