今月の臨床 婦人科がんの化学療法—われわれはこうしいる
妊孕性を考慮した卵巣悪性胚細胞腫瘍の化学療法
東 政弘
1
,
諸見里 秀彦
1
,
金澤 浩二
1
1琉球大学医学部産科婦人科
pp.724-729
発行日 1997年7月10日
Published Date 1997/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902975
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
卵巣悪性胚細胞腫瘍は若年者に発生する悪性度の強い疾患である.現在の化学療法が行われるようになる前は,予後はきわめて不良であった.とくに卵黄嚢腫瘍の予後は不良で,1979年発刊の教科書には日本産婦人科学会,卵巣腫瘍委員会の予後調査成績として治癒率は1.6%と記載されていた1).近年,癌化学療法の目ざましい進歩により,予後は著しく改善し,治療方法も大きく変化した2).その高い薬剤感受性と奏効率から,本疾患では進行期に関係なく妊孕性保存手術が試みられるまでに至っている.当科では1983年開設以来,若年者の卵巣悪性胚細胞腫瘍の全例に保存手術と術後化学療法を行っているが(ただし未分化胚細胞腫瘍Ia期には化学療法は行わない),再発・死亡例は1例もなく,化学療法後に健児を得ている症例も経験している3-6).
ここでは当科で実際に行っている若年者の悪性胚細胞腫瘍の治療法,とくに化学療法の実際について述べる.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.